著作権ちょっと変なお話

 さて、二つほどまたblogの記事を挙げておく。
ひたすらメシを食いながらダイエットする日記 2005/10/10 「のまネコ騒動(5) jo_30さんに対する反応」(ぱ)氏*1
osakana.factory osakana日記 2005/10/07 「のまネコ問題で考える二次創作の創造性」 みしきさかな氏

 (ぱ)氏の意見については別観点から再度取り上げる。
 この二つを挙げた理由は、2chを中心としたAVEXに対する反対論調が「著作権」を中心としていること、それに対する批判をしているからだ。正直言うと俺様もこれには概ね同意で、2chラーやVIPPER諸氏が著作権を元に批判するのを止めようとは思わないしそれは自由だと思うが、ただ法的根拠はあんまり無いのと違いますかと思うのである。このあたり、昨日jo_30氏の発言を挙げて著作権の話を書いているが、実際このあたり非常に混同されやすいと俺様は思っている。
 で、「のまネコ」問題を著作権がどうのという話にするのはどうか、という部分はみしきさかな氏が非常に端的に書いているのでそちらを参考にしてほしい。


 と、みしきさかな氏のblogを読んでいてちと思ったのが、そういやマイヤヒーO-ZONEの「DRAGOSTEA DIN TEI」)に関していえば、日本ではないが「のまネコ」事件どころじゃないもっとやばい著作権の話があったんだよなぁ、ということを思い出した。確かにあまり関係ないのだが、その国の著作権法が認めてしまえばこんな変な事も法的にアリ(合法)なのだ、という話だ。
 ちなみにあらかじめ言っておくが、これはヨーロッパ(イタリアやフランス)の著作権法の話だ。たぶんパロディが合法的に認められているから起こったことで、日本ではこの理屈は通らない。

  • マイヤヒー」のそのまんまパクり(無許諾カヴァー)が合法??

 まずは、osakana日記 2005/10/07 「のまネコ問題で考える二次創作の創造性」の引用だ。

2003年、モルドバ出身のO-Zoneは、シングル『Dragostea Din Tei』をリリースした。しかし、まず欧州各国でヒットしたのはこの曲ではなく、Haiducii という女性シンガーを用いた無許諾カバー版であった。
(中略)
O-Zone と Haiducii 双方は、お互いをパクリだと非難しあったが、O-Zone のリリースの方が早いためオリジナルは彼らであろうと思われる。


 それとこれも。
media@francophonie 2004/07/10 「この夏の大ヒット曲はモルドヴァ生まれ」より。

ウニヴェルソの社長は「マイハヒ〜!マイハホ〜」の呪術的な力のとりこになってしまった。これはヒットになる。ちょうどいい具合に、ウニヴェルソにはイタリア・ルーマニア系の女性歌手が一人所属していた。ハイドゥッチは片言だがルーマニア語ができる。社長は彼女にルーマニア語のオリジナル・ヴァージョンを録音させることに決めた。

これが大当たりだった!発売と同時に、ハイドゥッチ版の「Dragostea din tei」は売り上げのトップに躍り出た。オリジナル版の作者はどうしたかって?彼らには反論するための法的な手段がなかった。パロディや、原曲に忠実なコピーの場合、複製者には報告の義務がないのだ。「イタリアでの成功を知って、僕はちょっと頭にきた。同じ時期に、僕らはヨーロッパ市場に参入しようとしていたからだ。そして、誰も僕らには興味を持ってくれなかった」と、オゾンのリーダー、ダン・バランは回想する。


 みしきさかな氏の言うとおりHaiducii(ハイドゥッチ)氏バージョンは無許諾だ。だが、media@francophonie の記事が示すとおり無許諾なのに合法らしいのである。つまりこの場合、「Haiducii」バージョンの「Dragostea din tei」に著作権が与えられるのである。ただし後述するが、その場合でも作詞作曲はO-ZONEのリーダー"Dan Balan"であり、この著作権は別途に発生する。
 この法的根拠が俺様にはよく分からんのだが、イタリアの著作権法には「パロディや、原曲に忠実なコピーの場合、複製者には報告の義務がない」ということを認める条文があるらしい。確かにパロディ合法はイギリスやフランスの著作権法にあるとの話は聞くのだが、まさかこんな形で使われるとは。


 これがどういう結果を引き起こしたか?詳しくはmedia@francophonieを参照してもらいたいが、イタリアでは最初このカヴァーバージョンが大ヒット、O-ZONEは殆ど知られてないのに「Dragostea din tei」は大ヒットしているという様である。パクり以前に、まんまのカヴァーバージョンが、である。AVEXを弁護するわけでは全くないが、「のまネコ」が「モナー」のパクりだというレベルの話ではない。
 無論、後にDan Balan氏は「僕はちょっと頭にきた」と言ってるが、ちょっとで済むのかオイという感じである。いや確かにDan Balan氏はちょっとかも知れないが、O-ZONEの他のメンバーはさぞかしご立腹だったのではないかと思う。下手をすれば、モルドバの皆さんもご立腹だったかもしれない。


 ちなみにこれまた変な話、これは日本でも起こり得ることなのだが、「ちょっと頭にきた」O-ZONEのリーダーDan Balan氏にはちゃんと「作詞作曲」の分のロイヤリティ(著作権料)が入るのである。
media@francophonie 2004/07/10 「この夏の大ヒット曲はモルドヴァ生まれ」より。

この話の真の勝者は誰かって?ダン・バランだ。オゾンのリーダーで、作詞作曲も手がける彼は、自分の歌の全ての別ヴァージョンから売り上げの10%のロイヤリティを得ている。これだけで、すでに100万ユーロ。これにはラジオやテレビで曲が流されるたびに支払われる著作権料は含まれていない。まさしく大当たりだ!

 この場合、O-Zoneバージョンの「Dragostea Din Tei」に関してはO-ZONEとDan Balan氏にロイヤリティが入るが、その他のバージョンにはDan Balan氏個人にしかロイヤリティが入らない。他のメンバーであるAresenie氏やRadu氏には入らないのである。O-ZONEにはメンバー間の確執の噂があるらしいのだが、本当だとすれば原因のひとつはこういう所にあるのかも知れないと思う。


 とにかくこれは日本の著作権法に準拠した話ではないので全く事情は異なる。無論、著作権を取り巻く文化もだ。そうである以上法律の話としては「のまネコ」の事件とは全く事情が異なる。ぶっちゃけ関係ない。ただ、日本人から見れば倫理的にどう見てもおかしいだろう、多分ヨーロッパでもこれは「どうよ」という話なのだと思うが、他所の国の著作権法のためにこのようなおかしな話が、それも「Dragostea Din Tei」自体にあったということも、「著作権著作権」と言う人たちにはちょっと知ってもらいたかったのである。
 それと、殊更に「著作権著作権」という方、著作権ってそんな生易しい、人情で何とかなる世界ではないですよ、想像を絶するぐらいややこしいテキストで埋められた世界ですよ、という事は少し言いたくなる。ただ、これを「著作権をよく知らずに著作権を語るな」とまでもちょっと言いづらい。それを言い出すと、多分著作権がどうのと言ってるページは殆ど消えてしまうだろう。俺様ですら怪しい。曖昧な判断で「著作権」と言っている2ちゃんねらーが悪いのではない、あまりに理解しにくい著作権法とその運用が悪いのだと、「感情の観点からは」少しは2ちゃんねらーを弁護したい。著作権法が「悪い」とはいっても、じゃぁ変えれば?と言えるものではないのだが…。

*1:プロフィールの所に名前がなかったので迷ったのだが、これで合ってるよな?