著作物の種類とは?

  • 9種の著作物と、2種の編集著作物

さて、ここでようやく著作物の種類についてである。まず、著作権法に書かれている9の区分を挙げる。
著作権法*1

(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
  一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
  二 音楽の著作物
  三 舞踊又は無言劇の著作物
  四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
  五 建築の著作物
  六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
  七 映画の著作物
  八 写真の著作物
  九 プログラムの著作物
2 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項第一号に掲げる著作物に該当しない。

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
2 この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。
3 この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。


イラストなどは、当然「四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」である。OS娘などのネットキャラクターは、ほとんどがまずイラストによって表されるから、「美術の著作物」であるとまずは考えられる。他の種類の作品、例えばFLASHなどについては、後で簡単に書く。


なお、プログラムの著作物の定義にあたって、次のような付則がある。


著作権法

(著作物の例示)
第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
3 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。
  一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。
  二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。
  三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。
(昭六〇法六二・1項九号3項追加)


逆に言うと、JPGやGIFなどは上記の「プログラム言語」で組まれたものではなく、単なるデータに過ぎない。だから、ふたばにアップされる画像自体は当然プログラムではない。


著作権法

(編集著作物)
第十二条 編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
2 前項の規定は、同項の編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。
(昭六一法六四・1項一部改正)


(データベースの著作物)
第十二条の二 データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
2 前項の規定は、同項のデータベースの部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。
(昭六一法六四・追加)


雑誌などの編集者には「編集著作物」全体についての著作権が発生するし、データベースの作成者には「データベースの体系的な構成」についての著作権が発生する。ただしこれは、そこに収録されている「著作物」には、それぞれの区分での著作権が発生しており、「編集著作物」の持つ編集の著作権、「データベース」の持つ著作権とは関係がない。
これはふたばや、保管庫などがそれにあたる。「ふたば画像掲示板」はそれそのものとして「データベース」の著作物に当たるが、貼られている画像はそれぞれの著作権者が持っており、ふたばの管理人に帰属するわけではない。保管庫も同じである。(著作権者が作る保管庫は別だが、その場合もデータベースの著作物の著作権と美術の著作物の著作権は別個に発生する。)


「キャラクターの著作物」「漫画の著作物」「ゲームの著作物」などといった区分は直接は規定されておらず、これは各種類の複合的なものとして扱われる。
また、映画の著作物のみ「頒布権」(映画の著作物以外は「譲渡権・貸与権」)となっていたり、保護期間が著作者の死後50年(周知でない変名又は無名の場合、公表後50年)であるところが公表後70年(公表されない場合は創作後70年)であったりなど、他の著作物と比べ保護内容に違いがある。これはゲームの中古販売差し止め請求などに関連するのだが、なぜそうなるのかは俺様もよく理解していない。これも調べて、「著作権者にどのような権利があるのか」のところで少し書きたいと思う。ただし、ネットキャラにはあまり関係がない。


  • OS娘や、ネットキャラはどのような著作物なのか?その1

まずは、OS娘の作品にどのようなものがあり、それがどのような種類に属するのかを考えてみる。といっても今の段階で論じるのは、単純なレベルの話である。
OS娘は、ほとんどの場合イラストという形でふたばの各板に投下される。これそのものは、まず当然ながら「美術の著作物」としての性質を強く持っている。また、投下されたイラストを見れば、その性格や性質(例えば「緑はいらない子」とか、「ほめ子自重しろ」とか、「頼れる女ですから」とか…例が悪い?)などを想起(想像)することができる。各OS娘ごとに決まり文句があるぐらいなわけで、性格や性質など、こういうことを含めOS娘を言語でのみ?表現しうる性質も持っている。このことから、「言語の著作物」としての性質もある程度持っているのではないか?と考えることもできる。実際にはその考えにはかなり無理があるのだが、スレが与えたネタには著作権は認められるのかという観点から、もう少し論じる必要がある。(→キャラクターの著作物、漫画の著作物)
なお、アニメーションGIFなども「映画の著作物」ではなく、「美術の著作物」に含まれると考えられる。


OS娘に関連する純粋な言語の著作物としては、OS娘に関連する小説(SS)、例えばXP虐めスクリプト*2などは言語の著作物となる。また、OS娘に関する評論なども言語の著作物にあたる。
OS娘の漫画、特に同人誌レベルの完結したストーリーがあるものは、「絵」すなわち美術の著作物としての性質のほか、ストーリー(この場合は、台詞の組み合わせとして)には言語の著作物としての性質がある。原作として文字原稿がある場合は特にそうである。(→漫画の著作物)


「OSたんFLASH」などに代表されるFlash作品については、「映画の著作物」に当たるのではないかと思う。ただ「ゲームの著作物」が「映画の著作物である」としない判決があり、単純に「映画の著作物」と言ってよいのかは判断できない。
また、要素である「美術の著作物」や「音楽の著作物」、それとActiveScriptとして「プログラムの著作物」も含んでいると考えられる。該当FLASHの作者が創作したと言えるのは「プログラムの著作物」と「映画の著作物」だと思う。この場合、FLASHそのものは別途に著作権があるもの(例えば、各OS娘のイラスト)に対する二次著作物となるはずだ。(ほとんどの場合、「音楽の著作物」は…なのだが、深くは言及しない。)


OS娘の作品を貼るスレを立てる場合にスレ主は自分の文章をのせる。このような場合はどうだろうか。これはおそらく、イラストの著作物はそれそのものでひとつの著作物であって、「スレ主の文章」は別の「言語の著作物」として扱われるのではないかと思う。確かにスレとしては画像と文章をひとつとして扱うべき場合も多いのだが、著作物としては「切り離せるもの」と考えられるだろう。「美術の著作物+言語の著作物」として分割できないものとして扱う意見もとりうるが、これはスレの性質によると思う。


その他、スレのレスそのものには言語の著作物としての著作権が存在する。ただ、単語だけでは「創作性」は認められないし、ごく短い言葉にもそれは認められないだろう。
「どの程度」から発生するかは特には定められてはいないが、せめて一文ぐらいにはなっていないとダメではないかと思う。


スレ全体はどうか?これは、スレ全体としてひとつの作品とみなさざるを得ないもの、例えば「オナホール職人の朝は早い」などは、書き込んだ人間全員の共同著作物とする以外にないと思う。あのスレを一つの作品とみなすならば、全員の書き込みがその形成および創作性に寄与していると考えられるためである。ただそもそも、スレ全体をひとつの作品とみなすことができるか、という疑問はある。(著作権法の文言からすれば、結果として生まれたものだとはいえ、著作物だという事は可能だと思うが…)


AAなどはどうか。美術の著作物か、言語の著作物か、美術+言語の著作物か、あるいは著作物にはならないのか。これは各々のAAの規模と種類によるだろう。
創作性のある絵として成立するものは「美術の著作物」となると思うし、言葉ネタ的な要素の強いものは「言語の著作物」となるだろう。顔文字として数文字で成り立つものは「著作物なのかどうか」を考えるべきだし、元絵があるAA(例えば、「な、なんだってー!」)については、著作物の複製又は翻案との考えが生じる。
ただ、これまでAAについて法的に問題になったのは、タカラが「ギコ猫」を登録商標として申請しようとした時だけであって、これは著作権論議ではない。自分の漫画をAAにされたからといって怒って「訴えてやる!」と言い出す心の狭い漫画家は今のところおらず、将来的にもまぁ問題にされることはないと思う。だとするとわざわざ難しく論ずる意味がそもそもない気がする。主なAA産地である2chであれば、著作権は管理人ひろゆき氏に帰属することになるのだろうし…。
AAの著作権はどうなるのか?ということについては、著作権論議からは興味深い内容なのだが、少々難しい論議であると思う。確かに「ギコ猫」や「フーン兄弟」などのネットキャラはAA発祥だが、これをどう解釈するかはちょっと置いておく。
ただ、おそらく「美術の著作物」としての性質はある程度確立しており、「言語の著作物」としての性質はOS娘同様に論じる必要があるだろう。著作権に関して言えば、AA産のネットキャラは最初の作者を探すのがより(不可能と言えるまでに)困難な事、翻案の関係がOS娘以上にややこしい事、創作性があると言えるのかどうかという事がある。ただ、美術表現の媒体に文字を使っているというだけの差で、本質的にはOS娘などと同じような問題点、論点を抱えていると思う。


OS娘が持つ著作物の要素については、「キャラクターの著作物」や「漫画の著作物」について論じた後にもう一度詳しく考えてみたい。


と、今日もまた遅いので、このあたりで終わる。
次は、キャラクターの著作物の論議サザエさん裁判かポパイ裁判かキャンディキャンディ裁判かについて論ずると思う。


ちなみに書いてて思ったが、どーでもいいことを生真面目に論じている気がするのは俺様だけか。「オナホール職人の朝は早い」の著作権などは、まぁ悪ノリの意味もあるのだが…

*1:毎度だが、以下、著作権法 昭和四十五年五月六日 法律第四十八号 、平成 十六年十二月  一日 同 第百四十七号〔民法の一部を改正する法律附則第七十五条による改正〕 のものに基づく。

*2:XPを虐待するようなSS…なんだろうか。多分一連のシリーズなのではないかと思う。虹ぽを探すと出てくるが、リンクは貼らない。