先に訂正というか補足

法律とか判例とかのめどい点は、前から言ってる通り長いわややこしいわというのがある。この前「宇宙戦艦ヤマト事件」について書いたわけだが、これもまた長いので、実は判例の細かい部分は最初と最後しか読んでおらず、他の記事を参考にして書いていたわけだ。
で、書いた後に
牛木内外特許事務所 D. 著作権侵害訴訟 アニメ「宇宙戦艦ヤマト」事件
を通勤電車の中で読んでみたわけだが…。

「映画の著作物」について、監督でも表向きの原作者でもない「総指揮」のプロデューサーが「著作者」として存外に強いという判断が為された例である。一見意外に思うのだが、確かに映画の著作物についてはそのような解釈のできる条文がある。


と書いたのだが、これを読むとそら確かに西崎義展氏が勝つわけだと思った。
この判例には、「事実認定」という形で「宇宙戦艦ヤマト」〜「宇宙戦艦ヤマト・完結編」までの8作品について、西崎義展氏・松本零士氏双方の作品に対する貢献の度合いがかなり詳細に記されている。全体を通して認定されていることは、原作・監督として名前が挙がっているのは松本零士氏であるが、実質的にストーリーの骨子と企画を立て、大筋のシナリオを書き、スタッフをまとめ上げたのは西崎義展氏である、ということである。確かに西崎義展氏が実質的な原作者というべきで、松本零士氏の主張を通すのは難しかろうと思ったわけだ。むしろ、よく最後西崎義展氏側が「共同著作物である」と認めて和解したものだと思う。
この判例が興味深いのは、裁判の事実のみならず、西崎義展氏が「宇宙戦艦ヤマト」という作品を作成するに当たって非常に丁寧に関わっており、どのように作品を作り上げたかということがしっかりと表されている点だ。また、アニメーション映画という作品に含まれるたくさんの要素、作業分担、それをまとめ上げる苦労なども、かなり細かく読み取れることが興味深い。
この判例は事実認定もかなり明確で、また著作権がらみの裁判にしては判決の理論も分かりやすく、また「宇宙戦艦ヤマト」というヒットアニメの意外な一面をも淡々と、しかししっかりと描いたものとして一読の価値はあると思う。
ただもちろん、非常に長くて読みづらいのだが…。(これでも、マシな方だと思うが)



それと、一次著作物の著作権者が二次的著作物に対してどのような権利を持つかということについて。

つまり一次著作物の著作者がダメだと言うと二次的著作物の著作者はOKだと言えないのである。(逆はどうかというと…これはよく分からん。)

と書いたが、
牛木内外特許事務所 D. 著作権侵害訴訟 連載漫画の原作とキャラクターの絵との関係

著作権法28条は、「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と規定する。この規定の意味は、原著作物の著作権者には他人が創作した当該二次的著作物を当然に利用する専有権があると解することになる。したがって、Aの小説を英訳したBは、Aが許諾すればその英訳本を出版することができるが、AはBの英訳本を無許諾で出版することができることになる。

とある。つまり、BがダメといってもAはBに無許諾で二次的著作物を出版したりすらできるということらしい。これはいくらなんでも不公平だと思うのだが、著作権法ではそうなっているということだ。(もちろん、倫理上こういうことを行ったりは通常しないはずだが)
これは、先に述べた通り「二次的著作物」とされてしまうと、実質的にはその著作権は一次著作物の著作権者に握られてしまうということを示している。このことには注意する必要がある。