「のまネコ」vs「のまタコ」VIPPERの場合…?

 ここを読んでいる方はだいたいこの事件は知っていると思うが、O-Zoneの日本盤「DISCO-ZONE〜恋のマイアヒ〜」で、日本盤特別収録のFLASH映像「恋のマイアヒ〜ねこねこ空耳 恋ver.」について、これに出てくるキャラクターをAVEX系の有限会社Zenが「のまネコ」として商標登録したことに端を発する。どこでどう騒動になったかの詳細は知らないが、おそらく2chVIP板を中心に大騒ぎになり、VIPサイドから「のまタコ」の商標登録に関する公開質問状、そしてZenの商標登録取り下げと続く。
 俺様もITmediaぐらいでしかきちんとした情報は追っていないのだが、とにかくそういうことらしい。記事掲載順にリンクしてみる。


 2005/09/09 18:24 「のまネコ」は「モナー」? ネットで騒動に
 2005/09/25 18:48 「のまタコ」キャラ展開? ひろゆき氏、エイベックスに公開質問状
 2005/09/30 16:40 エイベックスが「のまネコ」Flash収録を中止へ 商標登録も中止依頼
 2005/10/03 20:19 「のまネコ」図形商標出願を取り下げ


 これと関連した事件としては、タカラの「ギコ猫」商標登録事件がある。これも商標登録を取り下げるという形で一応決着している。


 2002年6月3日 14:16 「ギコ猫」、タカラが商標登録を出願
 2002年6月3日 15:36 タカラ、「ギコ猫」商標出願を取り下げ 「ユーザーにお詫びしたい」
 2002年6月3日 22:35 「ギコ猫」騒動、タカラが軽率だったこと


 どちらの事件にせよ、特に「のまネコ」の件について俺様が思うのは、2chネラー(VIPPER?)怒らせたあんたら(AVEX/Zenとタカラ)が悪いよ、ということである。特に「のまネコ」の件については、ギコ猫の一件があった以上こういう事態になるとは予想できなかったのか?と言いたかったりする。さすがに「のまタコ」という返し方をすることまでは予想外で、これはなかなか面白い(興味深い)、ある意味VIPPERらしい手段だと思ったのだが。
 元々俺様、2chなどの巨大匿名掲示板を指して「日本最大のサイバーテロ集団」と表現することがある。ああ、こういう言い方をすると非常に悪いように聞こえるが、2chネラー等が犯罪者だと言いたいわけではない。例えば今回の件などを指して、「VIPPERを怒らせるような事をするAVEXが悪い、そのような行動は、日本最大のサイバーテロ集団を敵に廻したようなものだ」といった用法をする。つまりは、巨大匿名掲示板を敵に廻すような行動を取ることは、結果としてサイバーテロ組織を敵にするのと同様以上の被害を生みますよ、そういう事にならないよう慎重に行動する必要がありますよ、という警句として使うのである。*1
 ついでに言えば、一人一人が個々人として具体的行動に出ることはないのに、不特定多数の匿名集団という形になると攻撃的・批判的な行動に出る、「祭り」の一言で「みんなでやれば怖くない」的な発想が生じる、「みんなでやれば怖くない」を「される側」になったときどれだけ怖いか分かりますよね?という意味も裏にはある。これは説明しないと分かってもらえないが。


 これらの事件が語ることは、モナーギコ猫などといった、著作権の主張のしようがなく、ネット上で半ばパブリック化しつつあるAAなどであっても、企業などが無断で権利を主張しようとすればあっという間に叩かれるということである。上述のITmedia中の記事にもあるが、「ネット上でみんなで育ててきたキャラクターを改変し、独占的に金儲けに使うのは納得できない」という論調を主としている。ギコ猫の件はともかく、「のまネコ」はこれが商標登録されたからといってモナーには何の影響もないはずだ。にも関わらずここまで批判を受け、「のまタコ」というカウンターを食らい、結局商標出願を取り下げなければならなくなるのである。「のまネコ」の商品展開をしようと思っていたとしてもこれでは不可能だろうし(多分既に商品開発していたのだろうから、その分丸々損害だろう)、そもそもCDに収録されていたFLASHすら収録取りやめになる程の騒ぎになってしまったわけだ。AAキャラといえども甘く見ればこうなるといういい例である。
 要するに、AA産だろうがネットキャラを独占的に(あるいはそう見られる使い方で)商業で使おうとすればこのような批判が起こること、ネットキャラの独占的な商業利用は事実上困難であることを示している。同人レベルやあきば○〜等でつつましく売る分には構わないが、表立って大々的にやるのは非常に難しいということだと思う。これについては、ある面「電撃帝王のOS娘漫画掲載問題」に通じる面があると思う。


 ちなみにこれらの批判行動の中心に立ったのは2chVIP板、その住民であるVIPPERだが、彼らがなぜこのような行動に出るのだろうか。ひとつはモナーギコ猫などといったAAについて、2ch発祥*2で「我々2chネラーのものだ」という帰属意識が存在するのではないかということ、もうひとつは批判が手段ではなく目的になっているのではないか、ということである。
 「のまネコ」の件については、特に後者で面白半分のAVEX叩きの側面を持っていて、結果としてAVEXに頭を下げさせたという結果を生んだと俺様は考えている。これは実際には集団の批判の力でそうなったわけだが、批判している一人一人としては自分たちの「叩き」の結果、AVEXVIPPERに対して頭を下げたことになるわけだ。つまりVIPPERの勝利であり、AVEXという巨大?企業の「陰謀」を「叩き潰した」のである。これは「叩き」の醍醐味に違いない。


 VIPPER諸氏のこういう行動については、俺様は見てのとおり批判的な部分もある。ただこれは、感情的に見て必然的に発生しうるもので、企業の側が気をつけなければいけない部分だと思う。ネットキャラを発祥コミュニティに無断で商売に使用するなど、そのキャラに影響力のある集団の感情を害するような行動を取れば、このような批判的行動が当然に発生しうるわけだ。現在のインターネットの影響力のひとつはそのようなもので、それをまず念頭に置かなければならないということだ。
 逆に言うと、作者や著作権が曖昧にならざるを得ないネットキャラ一般において、企業などによる横取り的な行動に出られた場合、こういう行動でなければ発祥コミュニティの「意思」を主張できないということも確かである。こういった点は、「電撃帝王のOS娘漫画掲載問題」と根が同じだといえるだろう。


 さて、元の話に戻そう。
 2005/07/18の文章、「電撃帝王によるOS娘漫画掲載について考える2」からの続きである。

*1:俺様の知る限り、昔実際に田代砲やF5アタックなど、2chで祭りとなったために結果的にDDoS攻撃になったパターンもあったことも関係している。

*2:正しくは、ギコ猫モナーぁゃιぃわーるど発祥である